ゆ・ら・ら くるりん

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遠い遠い…森の記憶
(その6)

ひとりになるとやっぱり寂しい。


たっちゃんはふと思いついて布団をひきずって隣のあの部屋に運んでいく。

何故だかあの写真の側に行きたくなったのだ。不思議と寂しさが消えたっちゃんは急に眠気に襲われた。



「たっちゃん、たっちゃん」と自分を呼ぶ声がする。

「誰?」と布団から恐る恐る顔を出すと、その声は写真の中から聞こえてくる。

「ここだよ。おじさんの住む森に来てみないか?」

「あの森に?」と叫んだ瞬間、あの写真から白い光の帯が出てきて、たっちゃんの体をふわっと持ち上げた。





「うわっ!ここはどこ?」気が付くとたっちゃんは木の幹の中にいた。

大きな大きな古い木株は上がすっぽり抜けていて、青い空がぽっかり浮かんでいるように見えていた。

雲が流れ、周りの木々の葉っぱが空に模様をつけているように交差して広がっている。

小鳥の声も遠くで聞こえてくる。すごく気持ちがいい。緑の香りがいっぱいだ。







ぼーっとしていると、「さあそこから出ておじさんのところへおいで。」という声がする。

「おじさんはどこに居るの?」

「もっともっと山の高いところだよ。」

「ぼくまだちっちゃいからそんなに歩けないよ。」

「大丈夫!ここは夢の中の世界だから、たっちゃんの足でもすぐさ。

白い光の帯の道を辿ってごらん。面白いように速く歩けるはずだよ。」


木の株の外は大きな大きな木がいっぱい。どの葉っぱも皆おっきくてつやつやしてる。

光の帯の道の下は、ふかふかの緑の絨毯みたいな苔がびっしり生えていて、

どれも水滴をいっぱいつけて光っている。


たっちゃんは周りの世界が珍しくてきょろきょろしながら、光の道を一生懸命走った。

体が軽くなって、楽々と飛ぶように走っていける。

途中水の音がして、喉が渇いたたっっちゃんは、その小さな流れの水を手ですくって飲んでみた。

その水は透き通っていて、冷たくって甘くてびっくりするほど美味しかった。



どうしてだろう?誰もいない森の中でひとりぼっちなのにちっとも怖くない。

いつか嗅いでいたような、そんな懐かしい香りに包まれているようだった。

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